\documentstyle[a4j,tsipadoc,tsipa]{jarticle} \pagestyle{plain} \title{\tsipa: \TeX 用音声記号フォント} \author{小林 肇 \thanks{JUNET: {\tt koba@tokyo-shoseki-ptg.co.jp} }\\ 東京書籍印刷(株) \and 福井 玲 \thanks{JUNET: {\tt fukuirei@tansei.cc.u-tokyo.ac.jp}, PC-VAN: {\tt MWD56117} }\\ 東京大学 \and 白川 俊 \thanks{JUNET: {\tt sir@tokyo-shoseki-ptg.co.jp}, PC-VAN: {\tt PNM58211}, NIFTY-Serve: {\tt HCB00027} }\\ キャダムシステム(株) } \date{1992年12月25日} \begin{document} \maketitle \section{はじめに} \tsipa は,\TeX で音声記号を使用するために作られたもので,音声記号 フォントの\MF ソース,およびそれを使うためのマクロコマンドからなる セットです。 \TeX は,本来数式をきれいに組むために開発されたソフトですが,その組 版能力は,文科系・理科系を問わず,非常に利用価値の高いものです。こ とに,組版が複雑で手作業による負担が大きいほど,\TeX は絶大な威力を 発揮します。 言語学の分野では,普通には使用しないような音声記号を多く用いるため, 活字を使っての組版はなかなか困難なことでしたが,フォントさえ用意で きれば,\TeX を使って美しい組版を実現することが可能です。そのような わけで,今回作成したのがこの\tsipa です。 音声記号を\TeX で使用するためのフォントとしては,これまでにもすでに いくつかの\MF ソースが発表されています\footnote{WSUIPA (Washington State University), Emma Pease版 (CSLI)などがあります。}。しかしなが ら,文字種や品質の点から,完全に満足の行くものはなかなかありません でした。 そのような折,言語学の専門書を\TeX で出版するという話が持ち上がり, この機会に,写植機での出力に耐えうる品質のフォントをぜひ作成し,そ れを用いて組版を行おう,ということとなり,\tsipa を設計するに至りま した\footnote{\tsipa を用いたこの本は,『北の言語:類型と歴史』とし て,1992年6月に三省堂より出版されました。\tsipa の名称は,本フォン ト作成にかかわった,東京書籍印刷(株)および(株)三省堂の2社に由来 します ({\it T\/}okyo-Shoseki-Printing--{\it S\/}anseido {\it I\/}nternational {\it P\/}honetic {\it A\/}lphabet)。 また,\tsipa の文字は,東京書籍印刷(株)の写研製写植機 SAPLSに登録されており,写植出力することが常時可能になっています。}。 音声記号フォントの需要は,潜在的に見るとかなり高いようなので,広く みなさんに使っていただけるよう,一般に公開することとしたものです。 本フォントの作成にあたっては,記号の選定および文字形状の決定を福井 および白川が,フォントデザイン(\MF ソースコーディング)を小林が行 いました。なお,本ドキュメントに関する責任は白川にあります。 \section{文字選定について} 音声記号と一口にいっても,いろいろな種類のものがあります。国際的に はIPA(International Phonetic Alphabet, 国際音声字母)がありますが, アメリカなどでは,これとは一部違ったところのある独自の記号が一般的 に使われているようです。WSUIPAなどは,アメリカで作られたものである ためか,そのようなアメリカ式の記号を多く含んでいるようです。 日本では,一般的にはIPAが広く使われています。したがって,\tsipa も, 文字種としてはIPAをベースとすることとしました。ただし,日本において も,IPA以外の記号がいくつか音声記号として使われています。このような 事情を考慮して,そういった記号のうち使用されることが多いと判断した ものについては,フォントに取り入れることとしました。 また,IPAも,時期によって少しずつ記号の増減などがあり,変化していま す。最近では1989年に大がかりな改訂が行われ,新しい記号が多数制定さ れました。\tsipa では,この改訂も考慮に入れ,それらの新しい記号もサ ポートしています。 一方,\TeX 側の技術的な事情として,1フォントファイルあたり128文字に まとめなければならないという制限があります。文字数が許す限り,でき るだけ多くの種類の記号をサポートできるのが望ましく,音声記号の場合 も,128文字ではなかなか足りないというのも事実です。このため,フォン トを2つ(以上)のセットに分けるという方法も検討しましたが,繁雑にな ることを避けるため,フォントファイルを分割する方法は取らず,1ファイ ルにおさめることとしました。このようなことから,\tsipa では,独立し て作成する文字は最低限に抑え,マクロで合成できるものは極力そのよう にしてあります。 また,今回作成したのはローマン体のみです。無文字言語の記述などで, 音声記号を正書法代わりに使うこともあるので,イタリック体やボールド 体の文字もサポートすることが望ましいのですが,文字数の制限,使用頻 度,およびコーディングの作業量等を総合的に判断した結果,本バージョ ンではサポートを見送ることとしました。 ただし,例外が一つだけあります。\italicschwa (\schwa\ のイタリック 体)は,特に英語の教科書などにおいて,非常に多用されるものであるた め,この1文字に限っては,イタリック体であるにかかわらず取り入れるこ ととしました。結果として,ローマン体のフォントセットの中に1文字だけ イタリック体の記号が含まれるという,やや変則的な構成になっています。 書体は,\TeX のフォントとしては当然のことながら,{\tt cmr}に合わせ ました。サイズは,今回作成したものは10ptのもののみです。もちろん, {\tt magstep}をかけることで任意のサイズのフォントを生成することがで きます\footnote{実際,後述するように,上付き文字などはそのようにし てスケーリングしたフォントを使うようにマクロを作ってあります。}が, 字形は{\tt cmr10}に沿ったものとなっているので,小さいサイズで使うと, 線が弱く,字がやせて見えます。 \section{フォントの使用方法} \subsection{ファイル構成} \tsipa は,以下のファイルからなります。 \begin{itemize} \item \MF ソース \begin{example}{{\tt tsipa10.mf}} \item[{\tt tsipa10.mf}] パラメータファイル \item[{\tt ipachar.mf}] プログラムファイル(Small Capital以外) \item[{\tt ipasc.mf}] \makebox[9zw]{〃}(Small Capital\footnote{% Small Capitalのフォントとしては,Computer Modernファミリーにも{\tt cmcsc}がありますが,{\tt cmcsc}のSmall Capitalは,文字の高さが{\tt cmr}の{\it x\_height\/}(小文字のxの高さ)よりも若干高くなっていま す。音声記号では,Small Capitalは高さが{\it x\_height\/}のものを使 用するのが慣例となっているようなので,{\tt cmcsc}のものを使用するこ とはせず,独立した文字として作成してあります。}) \end{example} \item \LaTeX 用スタイルファイル \begin{example}{{\tt tsipa10.mf}} \item[{\tt tsipa.sty}] マクロ定義ファイル \item[{\tt ts10pt.sty}] フォント定義ファイル(10pt用) \item[{\tt ts11pt.sty}] \makebox[10zw]{〃}(11pt用) \item[{\tt ts12pt.sty}] \makebox[10zw]{〃}(12pt用) \end{example} \end{itemize} 上に示した\MF ソースのうち,フォントを生成するときに直接指定するフ ァイルは{\tt tsipa10.mf}です。{\tt tsipa10.mf}を処理する過程で,自 動的に{\tt ipachar.mf}と{\tt ipasc.mf}が読み込まれます。 また,スタイルファイルのうち,\LaTeX 文書ファイルのスタイルオプショ ンとして直接指定するのは{\tt tsipa.sty}です。 {\tt ipa{\it xx\/}pt.sty}は,{\tt tsipa.sty}の中で自動的に呼び出されます。 \subsection{フォントの生成} \tsipa で使用する文字は,{\tt tsipa10}にすべて含まれているわけでは ありません。一部の文字については,{\tt cmr}, {\tt cmsy}のものを使用 するようになっています\footnote{{\tt cmr}は,合字になっている文字の 部品として,多くの文字で使われています。また,{\tt cmsy}は, {\tt \tbs vertline} (\vertline), {\tt \tbs doublevertline} (\doublevertline), {\tt \tbs downarrow} (\downarrow), {\tt \tbs uparrow} (\uparrow), {\tt \tbs globfall} (\globfall), {\tt \tbs globrise} (\globrise)の6つの記号に使用されています。}。 {\tt cmsy}については,\LaTeX ですでにインストールされているサイズの ものを使用しますので,特に気にする必要はありません\footnote{ただし, 25ptで{\tt cmsy}の記号(上の注に示した6つ)を使用する場合には {cmsy10 scaled magstep5}が必要となります。}が,{\tt cmr}は,\LaTeX で使用していないサイズのものを使う\footnote{{\tt cmr}の文字と組み合 わせて使う記号は,カーニング量を{\tt cmr10}に合わせてマクロを作って あるため,{\tt cmr10}をスケーリングしたフォントが必要となります。} ので,注意してください。 具体的には,\LaTeX で標準に用意されている以外に,使用するサイズの \begin{itemize} \item 本体文字のポイント数にスケーリングした{\tt tsipa10}, {\tt cmr10} \item 上付き文字のポイント数にスケーリングした{\tt tsipa10} \end{itemize} が必要となります\footnote{本体文字の{\tt cmsy},および上付き文字の {\tt cmr}は,\LaTeX で標準に用意されているフォントを使用します。ま た,{\tt cmsy}の記号を上付き文字で使用することはないでしょう。}。各 サイズにおけるポイント数の具体的な値は次の通りです。 \begin{center} \begin{tabular}{|l||c|c|c|c|c|c|} \hline & \multicolumn{2}{|c|}{{\tt 10pt}} & \multicolumn{2}{|c|}{{\tt 11pt}} & \multicolumn{2}{|c|}{{\tt 12pt}} \\ \cline{2-7} & \makebox[3zw]{本体} & \makebox[3zw]{上付き} & \makebox[3zw]{本体} & \makebox[3zw]{上付き} & \makebox[3zw]{本体} & \makebox[3zw]{上付き} \\ \hline\hline {\tt\tbs tiny} & 5pt & 5pt & 6pt & 5pt & 6pt & 5pt \\ {\tt\tbs scriptsize} & 7pt & 5pt & 8pt & 6pt & 8pt & 6pt \\ {\tt\tbs footnotesize} & 8pt & 6pt & 9pt & 6pt & 10pt & 7pt \\ {\tt\tbs small} & 9pt & 6pt & 10pt & 7pt & 11pt & 8pt \\ {\tt\tbs normalsize} & 10pt & 7pt & 11pt & 8pt & 12pt & 8pt \\ {\tt\tbs large} & 12pt & 8pt & 12pt & 8pt & 14pt & 10pt \\ {\tt\tbs Large} & 14pt & 10pt & 14pt & 10pt & 17pt & 12pt \\ {\tt\tbs LARGE} & 17pt & 12pt & 17pt & 12pt & 20pt & 14pt \\ {\tt\tbs huge} & 20pt & 14pt & 20pt & 14pt & 25pt & 17pt \\ {\tt\tbs Huge} & 25pt & 17pt & 25pt & 17pt & 25pt & 17pt \\ \hline \end{tabular} \end{center} 上の表にしたがって,必要な大きさのフォントを\MF によって生成してく ださい。{\tt tsipa10}または{\tt cmr10}に対してかけるスケーリング ({\tt mag}に指定する値)は,次のようにしてください。 \begin{center} \begin{tabular}{*{2}{r@{: {\tt mag=}}l}} 5pt & {\tt 0.5} & 11pt & {\tt magstep0.5} \\ 6pt & {\tt 0.6} & 12pt & {\tt magstep1} \\ 7pt & {\tt 0.7} & 14pt & {\tt magstep2} \\ 8pt & {\tt 0.8} & 17pt & {\tt magstep3} \\ 9pt & {\tt 0.9} & 20pt & {\tt magstep4} \\ 10pt & {\tt 1}(省略可) & 25pt & {\tt magstep5} \end{tabular} \end{center} たとえば,10ptの{\tt \tbs normalsize}で使用する場合には, \begin{quote} \begin{tabular}{l} {\tt tsipa10}\\ {\tt tsipa10 scaled 700} \end{tabular} \end{quote} のフォントを,また,12ptの{\tt \tbs normalsize}で使用する場合には, \begin{quote} \begin{tabular}{l} {\tt tsipa10 scaled magstep1}\\ {\tt tsipa10 scaled 800}\\ {\tt cmr10 scaled magstep1} \end{tabular} \end{quote} を作ってください \footnote{できれば,{\tt mag=0.5}から{\tt mag=magstep5}までの12サイ ズを一度に作ってしまうことをお薦めします。多少手間はかかりますが, こうしておけば文字サイズにかかわらず\tsipa を使うことができます。}。 解像度は,手元のプリンタに合わせて適当な数値を指定してください。 \subsection{スタイルオプションの設定} \tsipa を使うための\LaTeX 用スタイルファイルとして,すでに述べたように, \begin{itemize} \item \makebox[10zw][l]{マクロ定義ファイル}:{\tt tsipa.sty} \item フォント定義ファイル: {\tt ts10pt.sty}, {\tt ts11pt.sty}, {\tt ts12pt.sty} \end{itemize} が用意してあります。これらのファイルを,環境変数{\tt TEXINPUTS}で指 定されるディレクトリへあらかじめ配置しておいてください。 文書ファイルには,まず,このスタイルファイルを使用する宣言をしてお きます。\LaTeX 文書ファイルの冒頭で, \begin{quote} \begin{verbatim*} \documentstyle[a4j,tsipa]{jarticle} \end{verbatim*} \end{quote} のように,{\tt \tbs documentstyle}コマンドのオプション引数に{\tt [tsipa]}を指定してください。 {\tt ts10pt.sty}, {\tt ts11pt.sty}, {\tt ts12pt.sty}は,適切なサ イズのものが{\tt tsipa.sty}の中から自動的に呼び出されます。 これによって,マクロを用いて音声記号を記述することができるようにな ります。 \subsection{マクロ} \tsipa で使えるすべての記号の記号名称とマクロ名称の一覧は,本ドキュ メントの末尾に付録として示してあります。ここでは,例を挙げながら, その使い方について説明していきます。 \subsubsection{命名規則} 音声記号のマクロ名は,原則として,1989年版IPAの名称に基づいています。 その上で, \begin{itemize} \item `-ive', `-ed'等の語尾は省略する \item `right', `left'は{\tt r},{\tt l}とする \item `small capital' は{\tt sc}とする \item 旧字形のものは{\tt old}を頭につける \item その他適当に単語を短くする(これはあまりそうなっていない) \item `beta', `phi'等のギリシャ文字のように,すでに\LaTeX の マクロ名があり,混同の恐れがある場合には{\tt ipa}を頭に付ける \end{itemize} 等の規則により命名しました。例を挙げると次のようになります。 \begin{quote} \begin{tabular}{llc} {\bf 記号名称} & {\bf マクロ名} & {\bf 文字}\\ Schwa & {\tt \tbs schwa} & \schwa \\ Cursive A & {\tt \tbs cursa} & \cursa \\ Right-tail D & {\tt \tbs rtaild} & \rtaild \\ Small Capital G & {\tt \tbs scg} & \scg \\ Old L-Yogh Digraph & {\tt \tbs oldlyoghdigraph} & \oldlyoghdigraph \\ Glottal Stop & {\tt \tbs glotstop} & \glotstop \\ Theta & {\tt \tbs ipatheta} & \ipatheta \end{tabular} \end{quote} サポートする音声記号の種類が多いこと,また,音声記号を連想しやすい マクロ名である必要があることなどから,マクロの名前は長いものが多く なっており,中には{\tt\tbs tcurlytailcdigraph}のようにかなり長い ものもあります。このように長い名前の記号を大量に使用するような場合 には,必要に応じて, \begin{quote} {\tt \tbs def\tbs TC\tbracei\tbs tcurlytailcdigraph\tbraceii} \end{quote} のように,短く使いやすい名前に再定義してください。 \subsubsection{通常文字} 通常文字の場合は,マクロ名称をそのまま該当部分に記述します。 \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|cut [k\turnv t]| \\ \verb*|nuit [n\turnh i]|\\ \verb*|n\"{a}her [n\ipaepsilon\length\schwa]| \item[{\bf 出力}] cut [k\turnv t] \\ nuit [n\turnh i] \\ n\"{a}her [n\ipaepsilon\length\schwa] \end{example} \subsubsection{上付き文字} 上付き文字を出力するには,{\tt \tbs super}というマクロを用います。 \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|top [t\super{h}\openo p]|\\ \verb*|Erinnerung [\ipaepsilon r\super{\glotstop}in\schwa r\ipaupsilon\eng]| \item[{\bf 出力}] top [t\super{h}\openo p]\\ Erinnerung [\ipaepsilon r\super{\glotstop}in\schwa r\ipaupsilon\eng] \end{example} このように,上付き文字にしたい記号を引数として指定します。引数には, \verb|\super{h}|のように通常の英文字を指定することも,また, \verb|\super{\glotstop}|のように音声記号(\tsipa マクロ)を指定することも できます。 \verb*|\super|コマンドは,上付き文字1文字に対して1つ記述してください。 \verb*|\super{nd}|のように,1つの\verb*|\super|に複数文字分の引数を指 定することはできません。この場合には,\verb*|\super{n}\super{d}|と記 述してください。 \subsubsection{補助記号} 各補助記号を示すマクロを使用します。マクロの引数には,その補助記号 をつける本体文字を記述します。 \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|shutter [\esh\ipaacute{\turnv}t\schwa]|\\ \verb*|liaison [lj\ipaepsilon z\ipatilde{\openo}]| \item[{\bf 出力}] shutter [\esh\ipaacute{\turnv}t\schwa] \\ liaison [lj\ipaepsilon z\ipatilde{\openo}] \end{example} 文字の上につける補助記号としては,\TeX にも,もともと\verb*|\'|, \verb*|\`|, \verb*|\^|等が用意されていますが,これらは\tsipa の音声記号 に対して用いることはできません(たとえば\verb*|\'{\schwa}|とすると, `\'{\schwa}'となってしまいます)。このため,これらに相当するものと して,以下の\tsipa マクロを用意してあります。 \begin{quote} \begin{tabular}{ccl} {\bf 記号} & {\bf \TeX マクロ} & \multicolumn{1}{c}{{\bf \tsipa マクロ}}\\ \'{} & \verb*|\'| & {\tt\tbs ipaacute} \\ \`{} & \verb*|\`| & {\tt\tbs ipagrave} \\ \^{} & \verb*|\^| & {\tt\tbs circum} \\ \"{} & \verb*|\"| & {\tt\tbs umlaut} \\ \~{} & \verb*|\~| & {\tt\tbs ipatilde} \\ \={} & \verb*|\=| & {\tt\tbs overbar} \\ \.{} & \verb*|\.| & {\tt\tbs overdot} \\ \u{} & \verb*|\u| & {\tt\tbs ipabreve} \\ \v{} & \verb*|\v| & {\tt\tbs ipawedge} \\ \H{} & \verb*|\H| & {\tt\tbs doubleacute} \\ \t{} & \verb*|\t| & {\tt\tbs toptiebar} \end{tabular} \end{quote} 上の表のうち,{\tt \tbs toptiebar}は,{\tt \tbs t}とは字形そのもの が若干異なっており,\raise.8ex\hbox{\ipafonti\char'152} のようになります。 文字の上につける補助記号が\TeX マクロをそのまま使えないのに対して, 文字の下につく補助記号を表す\TeX のマクロ(\verb*|\c|, \verb*|\d|, \verb*|\b|)は,音声記号に対してもそのまま用いることができますが, これらに対しても,対応する\tsipa マクロを用意してあります。 \begin{quote} \begin{tabular}{ccl} {\bf 記号} & {\bf \TeX マクロ} & \multicolumn{1}{c}{{\bf \tsipa マクロ}}\\ \c{} & \verb*|\c| & \verb*|\cedille| \\ \d{\ } & \verb*|\d| & \verb*|\underdot| \\ \b{\ } & \verb*|\b| & \verb*|\underbar| \end{tabular} \end{quote} これらのほかにも,多種類の補助記号を用意してあります。その一覧は付 録を参照してください。 使用方法は,上に述べたとおり,本体文字を引数として,その補助記号を 表すマクロを記述します。ただし,{\tt \tbs corner}, {\tt \tbs rectangle}, {\tt \tbs rhook}については,本体文字を引数とするのでは なく,通常の文字と同様,次のように独立して記述してください。 \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|mat [m\ae t\corner]| \\ \verb*|rat [r\ae t\rectangle]| \\ \verb*|butter [b\turnv t\schwa\rhook]| \item[{\bf 出力}] mat [m\ae t\corner] \\ rat [r\ae t\rectangle] \\ butter [b\turnv t\schwa\rhook] \end{example} \subsubsection{音声記号以外の文字} 以下の2文字は音声記号として使うことはほとんどありませんが,古英語等 で比較的よく使われる文字であるため,本フォントにも用意しました。 \begin{quote} \begin{tabular}{llc} {\bf 記号名称} & {\bf マクロ名} & {\bf 文字} \\ Thorn & {\tt \tbs thorn} & \thorn \\ Wynn & {\tt \tbs wynn} & \wynn \end{tabular} \end{quote} \subsection{組版上の注意事項} \subsubsection{前後の文字間の調節} \tsipa では,{\tt tsipa10},{\tt cmr{\it x}},{\tt cmsy{\it x}}とい った異なるフォントを組み合わせて使用しており,マクロ中でこれらのフ ォントを切り替えるため,各文字についてフォントのグルーピングを行っ ています。したがって,{\tt TFM}ファイルのligtableによる自動カーニン グを行うことができません。 このため,文字によっては,前後の文字との間隔が十分にとれないことが あります。 \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|[f\sci\esh]| \item[{\bf 出力}] [f\sci\esh] \end{example} のように,\esh\ などの右側にはみ出している文字は,後続の文字とくっつ いてしまいます。この場合, \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|[f\sci\esh\/]| \item[{\bf 出力}] [f\sci\esh\/] \end{example} のようにイタリック補正を入れることで,適正な間隔をあけることができ ます。 これとは逆に, \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|[\esh\turnv t]| \item[{\bf 出力}] [\esh\turnv t] \end{example} では,\esh\ がその前の [ とくっついてしまいます。この場合には,明示 的に{\tt \tbs kern}を入れてください。\tsipa では, {\tt \tbs K}({\tt \tbs kern.05em}), {\tt \tbs KK}({\tt \tbs kern.1em}), {\tt \tbs KKK}({\tt \tbs kern.2em}) という3種類のカーニングマクロを定義してあるので,適宜これを用いて \begin{example}{入力} \item[{\bf 入力}] \verb*|[\KK\esh\turnv t]| \item[{\bf 出力}] [\KK\esh\turnv t] \end{example} のように調整してください。 \subsubsection{合成文字のずれ} \tsipa には, \begin{quote} \begin{tabular}{lcl} {\tt \tbs hooktopc} & \hooktopc & (c + {\hooktop})\\ {\tt \tbs hooktopscg} & \hooktopscg & ({\scg} + {\hooktop})\\ {\tt \tbs lhookt} & \lhookt & (t + {\ipafonti\char'136} + {\palhook}) \end{tabular} \end{quote} のように,部分品の文字を合成して実現しているものがたくさんあります。 これらの文字を定義しているマクロでは,十分に細かい解像度の出力装置 を使ったときに正しい字形となるように,合成部品の位置関係を決めてあ ります。 このため,解像度が数百dpiである,一般のプリンタなどの場合には,部品 間のずれが発生することがありますが,御了承ください。手許の環境に合 わせてマクロの数値を調節することは特に制限しませんが,変更したマク ロを使ったもので写植出力などを行う場合には,特に注意してください。 \subsection{文字コードテーブル} \tsipa の文字コードテーブルは次の通りです。 {% \def\fontname{tsipa10} \startfont \table } \begin{center} \begin{tabular}{ll} \oct{000}--\oct{123} (\hex{00}--\hex{53}) & IPA文字(新・旧)\\ \oct{124}--\oct{125} (\hex{54}--\hex{55}) & IPA文字合成用部品\\ \oct{126}--\oct{152} (\hex{56}--\hex{6A}) & IPA補助記号 \\ \oct{153}--\oct{157} (\hex{6B}--\hex{6F}) & 同上(旧) \\ \oct{160}--\oct{161} (\hex{70}--\hex{71}) & 非IPA補助記号 \\ \oct{162}--\oct{176} (\hex{72}--\hex{7E}) & 非IPA文字 \\ \oct{177} (\hex{7F}) & 未使用 \end{tabular} \end{center} \section{おわりに} 本フォントを使用してのご意見・ご感想・バグ情報などは,作者へ直接メ ールをくださるか,またはPC-VANのSSCIENCE,NIFTY-ServeのFLABOにある, \TeX 関係の会議室へお寄せください。 本フォントセットの再配布・転載は,自由に行っていただいてかまいませ ん。\MF ソースないしスタイルファイルに対して変更を加えることについ ても,とくに制限はしませんので,自由に行っていただいて結構です。 ただし,改変したものを公開される場合には,オリジナルのセットとの差 異がはっきりとわかるよう,フォント名を変えて行ってくださるようお願 いします。 なお,差し支えなければ,改変した旨を原作者にお伝えいただけると,非 常にありがたいと思います。 \newpage \input mactable \end{document}